そもそも4ヶ月の経営管理ビザとは?
4ヶ月の経営管理ビザは、会社設立の準備を目的として日本に滞在できるビザ(在留資格)です。
海外に在住する外国人が、協力者なしに日本で会社設立ができるという大きなメリットがあります。一般的な1年の経営管理ビザと具体的に何が違うのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
1年の経営管理ビザは何が問題なのか?
- (1)事務所の契約
- (2)定款の認証
- (3)資本金の振込
- (4)会社の設立登記
1年の経営管理ビザを取得する場合、ビザ申請前に次のことを済ませておく必要があります。
もし、経営管理ビザを取得したい外国人がすでに中長期の在留資格で日本に滞在しているのであれば、特に問題は生じません。しかし、海外に居住する外国人が経営管理ビザを取得する場合には、非常に高い壁があります。
それは、外国人が短期滞在ビザで来日しても、住民登録ができないということです。
日本国内に住所がなければ、日本の金融機関で口座開設をすることはできませんし、事務所の賃貸借契約を結ぶことも困難です。
こうした事情があるため、1年の経営管理ビザの取得には日本に居住する協力者の存在が不可欠といえます。日本国内に住所を持たない外国人本人に代わって、協力者が事務所の賃貸借契約を結び、資本金の振込口座を用意するわけです。
会社設立にはリスクもある
しかし、協力者とともに会社設立を進めることにはリスクもあります。
たとえば資本金についてのリスクです。会社設立前には、会社名義の法人口座を開設することができません。したがって、資本金の振込は協力者の個人口座に行います。つまり、大切な資本金を協力者に預けることになるのです。もし協力者が信頼のおけない人物であれば、資本金の持ち逃げという最悪のケースも覚悟しなければなりません。
また、事務所の賃貸借契約を結べば、賃料が発生します。経営管理ビザの許可が下りるのを待つ間は、もちろん会社経営を始めることができませんので、その間は事業収入がないまま家賃を支払い続けることになります。さらに、もしビザが不許可になれば、そもそも事務所の契約そのものが無駄になるというリスクもあります。
4ヶ月の経営管理ビザの大きなメリット
こうした厳しい条件を緩和し、外国人の日本での起業を促すために2015年4月に設けられたのが「在留期間4ヶ月」の経営管理ビザです。
このビザは、会社の設立登記がなされていなくても、会社設立がほぼ確実に見込まれることが確認できた場合には、4ヶ月間の在留を認めるというものです。
資本金の振込と事務所契約を後回しにできる
4ヶ月の経営管理ビザは、申請時点までに会社の設立登記を済ませる必要がありません。したがって、以下の2つがビザ申請前には不要になります。
4ヶ月の経営管理ビザの場合、資本金振込と事務所の契約は、本人がビザ取得後に来日して行います。つまり、日本国内に協力者がいなくても会社設立ができるということです。これが4ヶ月の経営管理ビザの最大のメリットです。
また、事務所の契約もビザの許可後にすればよいため、申請が不許可となったときのリスクは比較的小さいといえるでしょう。
申請前にやらなければならないこと
4ヶ月の経営管理ビザを申請するにあたって、やらなければいけないことは次のとおりです。
1、定款案の作成
会社の定款案を作成します。定款には目的、商号、本店の所在地、発起人の氏名や住所などを記載します。本店の所在地については、この時点では所在地の市区町村まで決まっていればOKです。
株式会社の場合は、このタイミングで定款の認証まで済ませるのがベストです。ただし、定款の認証には印鑑証明書(またはサイン証明書)が必要になりますので、用意できない場合はひとまず定款案を作成しましょう。
2、事業計画書の作成
事業計画書の作成も必要になります。
4ヶ月の経営管理ビザは、申請時点では設立登記が済んでいませんから、会社の実体がまだありません。会社の事業に実現性があるかどうかの判断は、主として事業計画書によってなされることになります。よって、事業計画書は最重要書類のひとつといえます。事業の採算性や継続性に疑問を持たれるような内容であれば、ビザが下りる可能性は低くなります。
3、その他の必要書類の準備
申請に必要なその他の書類を準備します。本人の預貯金の額を証明する資料などが必要になります。
また、事務所については、契約はまだ結べないとしても、入居を予定している物件の間取り図や、事務所のオーナーと交渉中であることを示す資料などを提出したほうがよいでしょう。
4、在留資格認定証明書の交付申請
必要書類がそろったら、出入国在留管理局にビザを在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。審査にかかる時間はおおむね2~3カ月程度です。無事にCOEが交付されたら、現地の大使館・領事館でビザの発給を受け、いよいよ入国となります。
入国後にやらなければならないこと
経営管理ビザ取得後は、4ヶ月の在留期間に事務所の契約や会社の設立登記などの手続きを行います。具体的には以下のような流れになります。
1、住所登録
まずは日本国内で住むところを決め、住み始めてから14日以内に市区町村の役所で住所登録をします。なお、このときまでに個人の印鑑を用意しておき、住所登録とあわせて役所で印鑑登録を行って印鑑証明書を取得するとよいでしょう。印鑑証明書は、後の設立登記で必要になります。
2、個人の銀行口座開設
資本金の振込をするための個人口座を開設します。この時点で在留期間が3カ月以上残っていないと、銀行に口座開設を断られることがあります。口座開設は住所登録後すみやかに行いましょう。
なお、4ヶ月の経営管理ビザの場合、地方銀行には口座開設を断られやすい傾向があります。口座開設が比較的やりやすいのはゆうちょ銀行です。
3、事務所の賃貸借契約
続いて事務所の契約です。経営管理ビザ取得のためには、自宅と兼用ではなく、独立した事務所を借りる必要があります。個室であれば、レンタルオフィスでも問題ありません。
4、会社設立登記
法務局で会社の設立登記を行います。登記が済んだら、税務署に各種届出と申請を行います。飲食や宿泊など、業種によっては営業許可の取得も必要になります。
5、各種届出
会社の設立手続完了後、各種届出を行います。税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなどが対象先となります。
6、各種届出
許認可が必要な事業を行う場合は、警察署・保健所・都道府県などの行政機関に対して手続きを行い、許可を得ることが必要です。
許認可が必要な主なビジネスは下記の通りです。
飲食業、不動産業、製造業、ホテル・旅館、建設業、運送業などです。
これらの手続きを完了させたうえで、出入国在留管理局に経営管理ビザの更新申請を行います。事業の安定性が証明できれば、1年間の経営管理ビザが下ります。こうして、晴れて事業を本格的にスタートさせることができるようになります。
4ヶ月の経営管理ビザにデメリットはある?
このようにメリットの多い4ヶ月の経営管理ビザですが、デメリットもあります。
ひとつは、在留期間が4ヶ月と短いため、1年の経営管理ビザに比べて銀行の口座開設が難しいということです。前述したように、ゆうちょ銀行が比較的口座開設がしやすくなっています。また、同様の理由で事務所の契約が結びにくいという問題もあります。
注意点(1)銀行口座の開設
経営管理ビザを取得する場合、多くのケースで500万円を出資し、会社を設立します。そして、500万円の振込先として日本国内に銀行口座(個人)を用意する必要があります。この銀行口座の開設が最難関であります。まず多くの銀行で、外国人の銀行口座の開設にあたり、下記のような制限を設けております。
- 日本に入国後6カ月未満の方
- 在留期間の残存期間が6カ月未満の方
このような制限があることで、経営管理ビザ4カ月の外国人は、ほとんどの銀行で口座開設を拒否されます。日本の銀行とコネがあるなどの特別な事情がなければ、「ゆうちょ銀行」で口座を開設することを推奨します。
注意点(2)言語の問題
日本に協力者がいなければ、経営管理ビザ4カ月で入国後、経営管理ビザの更新申請で許可を得るために、下記事項を行わなければなりません。
- 住所登録
- 印鑑証明書の作成
- 事務所の契約
- 日本の銀行において申請者本人の銀行口座を開設
- 資本金の振り込みを行い、会社設立登記
- 会社の銀行口座を開設
- 税務署へ法人設立届の他、届出書類を提出
- 営業許可が必要な業種の場合、営業許可を取得
市役所、銀行、税務署など、「日本語」での手続きを必要とする機関が多くあります。設立登記や税務署の手続きは、専門家に依頼することで対応は可能ですが、市役所や銀行手続きは原則ご自分で行う必要があります。日本語が全くできなければ、当該手続きを完遂させることはとても困難です。よって通訳・翻訳者が必要となってきます。